
イデアとは物事の理想像のことです。
プラトンという古代ギリシアの哲学者が提唱しました。
日本語の理想という言葉は、明治時代にプラトンのイデアを説明するために作られた造語なので、「イデア=理想もしくは理想像」という解釈で間違いありません。
プラトニックはプラトン的なという意味なので、中々に馴染みが深い人物と言えます。
ではプラトンのイデア論から説明していきましょう。
プラトンのイデア論とは?
私たちが手書きの三角形を見ても「これは三角形だな」とわかるのは、理想の三角形を知っているからです。
完璧な世界をイデア界、完璧ではない私たちの世界を現象界とした。
理想と現実の二元論的世界観と呼ばれるものです。
簡単に言うと「私たちが知覚している世界は、イデアの影にすぎない」というのがプラトンのイデア論です。
私たちの住んでいる場所はイデア界ではなく現象界ですから、写真と違う人が来ても落胆したり怒ったりしてはいけないのです。
なろう小説はイデア界を描いた作品
理想の男性や女性が人によって違うように、理想の世界というのも人によって違うでしょう。
なろう小説と言えば、トラックにひかれて異世界転生をするというのが定番です。
転生した主人公は、前世の記憶を持ってファンタジー世界へと転生します。
異世界転生の転生のあらすじを箇条書きにしてみましょう。
- 無職の主人公がトラックにひかれる
- ファンタジー世界の裕福な家に記憶を持ったまま転生する
- 今回の人生は努力しようと決意する
確実に努力が報われる人生というのが、元祖異世界転生の主題だったわけです。
なんの努力もせずに最強、というわけではなかったのです。
実際、主人公ルーデウスは幼少期から必死に努力をするのですが、強さの最大値を10とすると7くらいで、登場人物の中では強くありません。
物語はEQ(心の知能指数)の高さを発揮したり、仲間と力を合わせて進んでいきます。
涼宮ハルヒの憂鬱はイデアな青春を描いている
涼宮ハルヒは青春学園小説で、作者の理想の高校生活を描いています。
登場人物は全員、家庭内の問題も抱えてないし、凄く親切で良い人達ばかり。
現実の青春時代というのは、色々と問題や悩みが付きもので、大抵の人がうまくいかない。
しかし涼宮ハルヒに出てくる人物は、中庸を極めているというか、達観している仙人みたいな人が多いのです。
現実世界の高校生は大変荒れ狂っており、理想の(イデアな)高校生活には決して届きません。
ほぼ全ての人間が、「理想にはほど遠かった」と口にするでしょう。
ちなみに涼宮ハルヒの憂鬱には哲学用語がたくさん出てくるのですが、これは作者の谷川流さんが哲学に詳しいからでしょう。
哲学を知っている人がプラトンのイデア論を知らないはずがありませんので、作者はイデア論を知っている上で作品を書いた、という事実があります。
終わりに
生きていると確かに、「人は生まれながらにイデアを知っているのではないか?」と思われることは多いです。
何故か人間は天才タイプのキャラクターが好きですし、ゲームの女性キャラクターは異常にスタイルが良い場合が多いです。
- 全く練習していないのに上手にこなせる、そんな人は存在しないのに憧れる
- 一度も現実世界で見たことがない、現実離れした体型の女性を素敵だと思う
- 完璧な青春を過ごしたことがないのに、涼宮ハルヒの憂鬱が好き
人はイデアに惹かれるということなのでしょう。
しかし私たちが住んでいるのは現象界、 いくら理想(イデア)を目指して努力をしても届かないのは当たり前なのです。
自分の努力を褒めこそすれ、落胆する必要は全くありません。
「私たちが知覚している世界は、イデアの影にすぎない」という言葉も、イデア論を理解してしまえば、とても楽観的に聞こえますね。
自分自身もイデアの影ならば、写真と違う人もまた、イデアの影。
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未来永劫語り継がれていく文学作品の1つとなるでしょう。
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異世界転生は、序盤以外は普通のファンタジー小説になります。