昨日小さな子どもがいる友人と会話した時に、この本の内容を話したら非常に反応がよかった。
なので今回の記事は「学力」の経済学という本の書評です。
教育経済学者の中室牧子さんという人が書いた本で、全編を通して日本の教育制度が、いかにザルかという怒りの感情を持って書かれているように感じました。
ベストセラーとなった『統計学が最強の学問である』の著者である西内啓氏は、同著の冒頭で次のように述べています。
「不思議なもので、教育という分野い関しては、まったくといっていいほどの素人でも自分の意見を述べたがるという現象がしばしばおこる」
たしかに日本では、教育を受けたことがない人はいないので、教育のついて一家言あるという人は少なくありません。
まさに、「一億総評論家」状態だともいえるのです
日本では実際に、教育政策には科学的根拠が必要だという考え方は浸透していないとも。
他には東大生の親の平均年収は1000万という平均に比べると突出して高い。
なので子供を全員東大に入れたなどというのは、例外中の例外であり逸話であるのだが、教育の世界では何故かそういう個人の成功体験が注目されてしまう。
そんな話を鵜呑みにしては帰って子供を成功から遠ざけてしまうだろう。
もちろん本には書いていませんが、東大生の大半は親が裕福だから一般人とは生まれが違うって話。
統計上の証拠があるとしても、ちょっと差別的な表現だからねそれは。
個人の成功体験や主観ではなく、科学的根拠に基づく教育を。
エビデンス(証拠)が大事、そういうことを提案している本ですね。
日本は教育政策どころかクールビズの温度すら適当に決めるので、単純にアレだから正解がわからないのだと個人的に思っています。
では、昨日友人に話した中で、特に反応がよかった話を紹介していくことにします。
ご褒美はテストで良い点を取ったら?本を読んだら?どっち?
僕の友人は正解はすぐにわかったのですが、正解よりも理由のほうが大変興味深かったようです。
「テストで良い点を取ればご褒美をあげます」
「本を1冊読んだらご褒美をあげます」
子供の学力を上げる効果を持つのはどっち?
これはハーバード大学のフライヤー教授の実験で証明されています。
その実験では、アウトプットの種類もインプットの種類も、たくさんありました。
その前に教育生産関数を知っておくといいらしいので、慣れたツールで3分で作った図を貼っておきます。

別名「インプット・アウトプットアプローチ」
すなわち
テストで良い点を取る=アウトプット
本を読む=インプット
となります。
結果はインプットの勝利
どちらの場合も子どもたちはやる気を出して、ご褒美の獲得を喜んでいたにも関わらず、アウトプットへのご褒美の子どもたちは全く改善しなかった……
モチベーションは十分なのに、全然改善しないというのはおかしい。
今回の鍵は、子どもたちがご褒美に対して、どう行動したか?というところにあった。
本を読んだらご褒美を上げるというグループのやるべきことは簡単。
本を読むだけだから、明確なのです。
文字が読めれば誰でもできる、だってご褒美がもらえるからw
一方でテストの結果が良ければご褒美を上げるというのは、具体的な行動が示されていません。
ご褒美も欲しい、やる気もある。
でもどうしたらいいかわからない。
このグループに大事だったのは、勉強のしかたを勉強することであったという話。
この話はこの本の中でも素晴らしかった。
何事も行動に落とし込むのが大事っていうわけだね。
子供だけでなく、全ての人が知っておくべき内容でしょう。
教育にはいつ投資するべき?
文部科学省によると、家庭が大学卒業までに負担する平均的な教育費は以下の通りです。
- 幼稚園から大学まで全て国公立だと1000万
- 全て私立だと2300万
日本政策金融公庫の調査によれば、子供がいる家庭では教育費に40%も使っているという話だ。
人的資本論という考え方があるのだが、教育(親の立場)を経済活動とすると、将来に向けた投資であると解釈できるっていう考え。
人々は教育段階が高くなるほど、投資の収益率も高くなると考えるが……
大学入学前や就職前の大事な時間をどう過ごすのか、これは重要である。
だからその期間に溜めていたお金を使うのは、理にかなっているように見えますね。
なので人は子供が小さい時にお金を溜めて、大学や高校入学前に使う。
しかし教育経済学的には、その思い込みは全く違うという話。
もっとも収益率が高いのは、子供が小学校に入学する前の就学前教育(幼児教育)です。
人的資本への投資は、子供が小さい頃に行うべきだと。
僕の家は教育熱心(むしろ両親にコンプレックス的なものがあって反対だったw)な家庭ではなかったですが、僕は生まれてくる時に異常に体が大きかったし、家に図鑑がありましたね。
確かにそういうのは大きかったなと、読んだ時に感じました。
小さい子供のために図鑑を買うことをオススメしたい
僕の両親というのは、子供が生まれる前はウキウキしていたのでしょう。
教育熱心な家庭ではないのに、家には図鑑のような知育に良さそうな本がたくさんありました。
(なんであんな風になったのか予想は付くが、話すと暗くなるので辞めます)
父親がかなり本格的に盆栽をしている人なので、そのせいか植物図鑑だけなかったんですけどね。
植物以外は普通の人よりも大分わかるんですが、本当に雑草の名前とか苔の種類とかパッときません。
なので、やはり図鑑は重要だったんだなと認識しています。
図鑑というのは大半が画像なので漫画に近く、素晴らしく読みやすい。
さらに情報量も激しく多いですしね。
僕は2歳から文字が読めたんですが、ボロボロになるまで図鑑を読んでいたので結構当たり前の話でした。
本を買って1章まで読まない人は8割(村上春樹の小説だって例外じゃない)いるらしいですが、初めてその話を聞いた時は信じられなかったですね。
年収1500万以上の家庭の子は7割以上、読書習慣が付いているらしい。
7割という数字はかなり高く、意識していれば難しくないということです。
図鑑を読ませるだけで容易に読書習慣は付くんじゃないかな、という楽観的な意見でした。
終わりに
小さい子供を持つ親と教師の人は全員読んだほうがいい本ではありますが、こういう本を手に取るような人は既にリテラシーが高い。
本当に読むべきはそうじゃない人たちではあるんですが、中々難しい。
この本の大部分は、よくされる質問に答えているというQ&Aのちょっと長いバージョンみたいな構成なので、かなり読みやすかったです。
難しいことが誰でも簡単に理解できるという本。
例えばゲーム下手な人に限ってロウソク問題を知らないんですよ。(知ってれば下手じゃないだろというのはある)
本当に伝えるべき人には伝わらない、というのが世の中の常なのかもしれません。
普通の人間は認知バイアスっていうのがあるから、自分から調べても情報が偏ってしまう。
難しい問題だ。
ネットで学歴とか教育の話っていうのは、基本的にコンプレックス丸出しの人が猛っているだけという構図しか見たことがないんですが、そんなに喧嘩するほど複雑な話でもないと本を見て感じました。
もしかしたらそういう人こそが、この本を見るべきなのかもしれません。