上達に関すること

どうして我々は東方非想天則の天候の順番を覚えられなかったのか?【ゲームと記憶術】

非想天則の天候が覚えられなかった理由

何故、いまさらこんな記事を書いたのか。

その理由から説明していきたい。

昔、熱心にプレイしていた東方非想天則という名の対戦ゲームに、天候システムというものがあった。

それは20種類の天候が決まった順番に流れていくというシステムで、覚えていれば試合を有利に進めるチャンスが増える。

天候によってガードできなくなったり、移動起き上がりができなくなったりするからだ。

でも「天候の順番をおぼえる」というやる気があり、毎日プレイしていたにも関わらず、誰一人まともに覚えられなかったのは不思議ではないだろうか?

当時プレイヤーは何十万人もいたのに誰一人覚えられないのは不思議だったなと、ゲームを辞めて何年も経つが、たまに考える時があった。

今はその理由がわかっているので、その理由を書けば元天測プレイヤーが何か新しいことを覚える時に役に立つと思った。

少なくとも天候を覚えられなかった仕組みは苦もなく簡単に理解できるだろう。

前置きが長くなったが、覚えられなかった理由から書いていくことにしよう。

20種類の天候が覚えられなかった理由

理由は主に次の2つ

  1. 試合展開が速いので対戦中は認知能力が使えない
  2. 20種類を専門的な方法以外で覚えるのは難易度が高い

人間が使える認知力は1秒間に40ビット

非想天則はスマッシュブラザーズみたいな対戦アクションゲームなので、対戦中は非常に忙しい。

対戦中に天候まで気を配るのが難しいのである。

これがカードゲームや人狼ゲームであったならば「台風まであといくつだ?よし、あと4つだな」と考える時間があるかもしれないが、認知力の大半を対戦相手に割いてしまっているので、曜日のように完全に暗記していないと意味がない。

ようは、考えてから答えを出すまでに1秒もかかるのでは遅すぎるのである。

もっと言えば、もし非想天則がアクションゲームではなくカードゲームだったならば、試合中に表を見ながらゆっくり答えを出せた。

繰り返せばそのうち慣れるので、誰もが一瞬で答えが出せるようになったはずだ。

でもそんなことは仕組み的に難しかった。

20種類という数は工夫なしでは覚えられない

問題1 20種類の天候をすべて答えよ

答え 答えのパターンは天文学的数字(順列計算サイトでも桁が多すぎて計算できなかった)

この覚え方は集合といって、最悪の覚え方と言われている。

情報の取り出し方が毎回違うので、記憶するのにコストがかかりすぎてしまうからだ。

もう少し詳しく理由を説明すると、情報の取り出し方が順列になっているからである。

例えば5種類から5個取り出すならば120の取り出しパターン。

10種類から10個なら、3,628,800の取り出しパターン。

このため集合では3つか4つまでしか覚えられない(3なら6、4なら24パターンとなる)。

問題2 20種類の天候を快晴から順番に答えよ

答え 1快晴 → 2霧雨 → 3曇天 → 4蒼天 → 5雹 → 6花曇 → 7濃霧 → 8雪 → 9天気雨 → 10疎雨 → 11風雨 → 12晴嵐 → 13 川霧 → 14台風 → 15凪 → 16ダイヤモンドダスト → 17黄砂 → 18列日 → 19梅雨 → 20極光

この覚え方は列挙といって、集合よりはマシという覚え方。

覚える対象に数字が足される分、情報量が増えているんだけど、情報の取り出しかたが常に一定なので負担が少ない。

身近な例だと「あかさたな」とか「アルファベット」がこの列挙だろう。

非想天則プレイヤーの大半は天候をこの列挙で覚えていて、川霧 → 台風のところだけ覚えていた(他は全然ダメだった)。

それしか覚えていなくとも、恩恵は凄く大きかったように思える。

でも20種類もあると、列挙で情報を素早く取り出すのは難しい。

「川霧を見たら狙っていくのは天候3送りコンボじゃないの?」と天候表を見て思った人もいるかもしれない、しかし列挙では川霧のあとにダイヤモンドダストを連想するには、4つも数える必要がある。

「あかさたな」で「あ」と唱えた瞬間に「た」を連想できる人は中々いないだろう。

川霧は脅威ではなく実際は気持ちよくなれるチャンスだったのだけど、我々にはそれが気づけなかった。

少なくとも僕にとっては越えられない壁だった。

天候を覚える方法

天候を覚える時に使えない暗記方法をおさらいしよう。

次の3つ

  1. 対戦中にチートシートを見ながら覚えるというやり方はできない
  2. 集合では話にならない
  3. 列挙では対戦中に情報を取り出せるスピードにはならない

1のチートシート(カンニングペーパー)は、考える時間が取れるのであれば非常に有効な手なんだけど、60分の1秒を競う対戦アクションゲームでは使えない方法。

2の集合は、3つか4つまでしか使えない(でも3つか4つでも使わない方法)。

3の列挙は、20では時間がかかりすぎる。

ちなみにPDCAサイクルやOODAループなど頭文字を取ったもの、にしむくさむらいなどの語呂合わせも列挙の覚え方で、つまり列挙はキャッチー。

では対戦中に一瞬で天候を取り出すにはどうしたら良いのか?

検索練習という方法を使う。

穴埋め問題をたくさん作る

問題 次の○に当てはまる天候は?

7濃霧 → 8雪 → 9○○○ → 10疎雨 → 11風雨
答え 天気雨

 

こういった問題をたくさん作るといい。

穴埋め問題は検索練習の1つだ。

9番目の天候は?というだけの問題に比べて、相互の関係性がつかみやすい。

例えば驚異的なストレスをプレイヤーに与える天候は台風だけじゃない、天気雨やダイヤモンドダストも特定の状況で来たら「はい、おしまい」という天候だ。

それにも関わらず川霧 → 台風の順番しか覚えていないのは、大半の日本人にとって台風は普段の生活で馴染みがあるから。

川霧が重要な天候だと思えるのは、それが台風を予告する天候だからだ(知りたいのは台風の効果ではなく、いつ台風が来るのか?普段の生活と一緒)。

花曇という天候はどうでもいいように思えるけど、コンボを決めたら天気雨になる可能性が高い、そう考えると非常に意味があるように思えて来ないだろうか?

世の中には単体で意味がある情報や数字というのは少ないので、比較しないと意味がよくわからないのである。

なので、穴埋め問題は関連性を持たせやすい。

もちろん列挙に比べて非常に努力が必要とされる覚え方だけど、当時の現役プレイヤーだったら全く苦にならなかっただろう。

終わりに

今回書いた内容は次

  1. 認知力には限りがある
  2. 集合は避けよう
  3. 列挙はキャッチーだけど効果が低い
  4. チートシートが使える場合は使ったほうがいいと思う
  5. 情報を素早く取り出すには検索練習をしよう
  6. 検索練習では穴埋め問題が比較的簡単

 

非想天則で天候を覚えようとしたけど歯が立たなかった苦い経験は、知識を定着させる方法を学んだ際にとても役に立った。

検索練習は結構難しいのだけれど「相手の特定の技をガードする>反撃できるコンボレシピを取り出す>入力する」という基本的なことも検索練習なので、プレイヤーには馴染みが深く感覚的に理解できると思う。

スキの少ない技に反撃できなかったり、昇竜をガードして最大ダメージを入れられない場合はストレスが大きいので、そこはみんな必死に練習するからだ。

以前のように対戦ゲームに熱中する機会はもうないと思うのだが、こうして他のことを学んだ時に役に立つというのは少し嬉しく感じるし、無駄だと思わないのは幸運である。

ここまで読んでくれた人が同じことを思ってくれたのであれば、なお嬉しい。

関連記事

効率的な記憶方法の具体的な手順【忘却曲線と分散学習】

どれくらいの感覚で復習するのが良いのか?という内容の記事。

やらなくなったゲームの腕が急激に落ちるのはいつ?ということも予想できるかもしれない。

 

暗記アプリに問題を登録する手順と有効なテストの作り方など

検索練習をする時に便利なAnkiというアプリに問題を登録する時のコツ。

僕はマインドマップを非想天則にも活用していたが、こういったアプリは使ってなかった。

-上達に関すること